論語を楽しむ

論語は主観読みが楽しい。

学而第一(7) 賢を賢として色にかえ

 

書き下し文:『論語 (漢文叢書)』WIKISOURCE

子夏曰く、賢を賢として色に易(か)へ、父母に事(つか)えて能(よ)く其力(そのちから)を竭(つく)し、君に事えて能(よ)く其身(そのみ)を致し、朋友と交り、言ひて信有らば、未だ學ばずと曰(い)ふと雖(いえど)も、吾は必ず之(これ)を學びたりと謂(い)はん。

 

訳:下村湖人『現代訳論語』青空文庫

 子夏がいった。――
「美人を慕う代りに賢者を慕い、父母に仕えて力のあらんかぎりを尽し、君に仕えて一身の安危を省みず、朋友と交って片言隻句も信義にたがうことがないならば、かりにその人が世間に謂ゆる無学の人であっても、私は断乎としてその人を学者と呼ぶに躊躇しないであろう。」

 

専門家の訳を楽しむ

まず、下村湖人の訳を楽しみます。

孔子の弟子のひとりである子夏が、次のような人物こそが学者と呼ぶのにふさわしいと語っています。

・賢者を慕う者
・父母に一生懸命尽くす者
・君主に安危を省みずに尽くす者
・友人に対して信義に背くことのない者

孔子門下における「学び」は善き生き方を学ぶことですから、ここでいう学者とは、善き生き方を学んだと言える者、くらいの意味に捉えようと思います。

興味深いのは最後の一言です。
学んでいなくても、つまり、誰かに指導を受けるとか、書物で学ぶ、ということがなくても、それを実践できているなら「学んだ人」とみなしてよいだろう、と語っている点です。これを聞いた弟子の中には、孔子や子夏の下で学んでいることに意味はないのか、と思った者もいたかもしれません。子夏の意図は、指導を受けることや書物で学ぶことを軽視するということではなく、実践できるということがいかに重要であるのかを伝えたい、ということだと思います。

子夏が挙げている四つの実践に目を向けてみましょう。
子夏は対人関係に着目しているのですが、最初に賢者との関係を挙げているところが特徴的です。しかも、「美人を慕う代りに賢者を慕う」というのですから少々驚きます。
賢者を慕う喩えに、「美人を慕うように」という喩えがふさわしいのでしょうか。
ともかく、言いたいことは分かりますし、記憶にも残ります。

当時(春秋時代)は、孔子を始めとした多くの賢者(思想家)が現れ、彼らは諸子百家と呼ばれています。子夏が言いたかったのは、「そのような時代にあって、私たちのように、しっかり賢者を識別して、その賢者を敬愛することが大切なのだ」ということかもしれません。子夏たちが敬愛する賢者はもちろん孔子です。

続く、父母との関係については、「孝」の実践を説いています。

次の、君主との関係については、いかにも封建時代らしい表現になっています。

最後の、友人との関係については、「信頼を損ねないようにしなさい」と説きます。
論語においては、「信頼を損ねないようにする」というのは、あらゆる人間関係の基本として捉えられています。

 

専門家の訳を自分の言葉で理解して楽しむ

下村訳を楽しみながら、下村訳を自分の言葉で理解してみました。

訳:

子夏が弟子たちに語った。
賢者を識別して敬愛する、父母に一生懸命孝行する、君主に一生懸命仕える、友人の信頼を損ねない、そうしたことが実践できている者は、善き生き方について、誰かに指導を受けるとか、書物で学ぶということがなくても、それを学んだ者とみなすことができるのだ。それだけ、実践できる/実践するということは重要なことなのだ。

 

本章の論語の果実を見いだして味わう

本章には、次のような「果実の候補」があります。

1 賢者を識別して、賢者を敬愛する
2 親孝行をする
3 仕事上の関係者に対して誠実に対応する
4 友人に対して信義に背くことはしない
5 実践できる/実践することが大切
6 学歴で人を判断しない

まず「実践できる/実践することが大切」、「学歴で人を判断しない」を果実として採り上げます。
今の日本では、まず学歴や学校歴に目が行き、それを基に人を判断するする風潮があるように思えます。テレビなどで嘘をついたり、的外れなことを言っている政治家や専門家が高学歴だったということもよく目にします。学歴よりも、その人が言っていること、実践していることにもっと注目すべきだと思うのですが。

次に、四つの人間関係の実践を果実として採り上げます。

ここではその中の、「賢者を識別して、賢者を敬愛する」という果実に注目します。
「出る杭は打たれる」ということわざがあります。「皆が横並びであることを望むため、目立つ人物が現れると皆で足を引っ張る」という日本の風土をよく示していることわざだと思います。
賢者は目立ちます。日本では「賢者という“出る杭”は打たれることが多い」のではないでしょうか。日本はイノベーションが起きにくいことで知られています。創造力がある「突出した人」が少ないのでしょうか。そうではなく、そうした人(賢者)に対する敬意を欠いたり、活躍の場を与えなかったり、という問題、風土的な問題が理由としてあるのではないかと思うのですが。

 

本章を自分に合うよう訳して楽しむ

そのようなことを考えながら、本章を自分の言葉で訳してみました。

訳:

善き人間関係について学んだと言えるかどうか知りたいなら、次のことができているか振り返ってみよう。

賢者を識別して、賢者に対して敬意を払えているだろうか?
親に対して、孝行できているだろうか?
仕事上の関係者に対して、誠実に対応できているだろうか?
友人に対して、信頼を損ねるようなことはしていないだろうか?

もし、それらを実践できているのなら、善き人間関係については学んだと言ってよいだろう。

学歴や学校歴で人を判断するよりも、その人が言っていること、実践していることに着目して人を判断することの方が大切なのだ。

 

事例を見いだす

事例1:古代中国では賢者を大切にしていた

「隗(かい)より始めよ」という故事成語をご存じでしょうか。
「優秀な者を集めたいならば、まず身近な者から優遇しなさい」という意味です。
その由来を紹介します。

古代中国では、賢者を大切にしていたことがよく分かります。

引用:中国語スクリプト/故事成語/隗より始めよ

燕の人々が太子の平を擁立して君主としました。 これが昭王です。 昭王は戦死者を弔い生存者を見舞い、丁重な言葉使いと礼品を用意し賢者を招こうとしました。王は郭(かく)隗(かい)にこう尋ねます。「斉は、我が国、燕が乱れているのに乗じて襲ってきて我が国をやぶりました。わが燕は小さな国で斉に報復する力がないことはよくわかっています。私はぜひとも賢者を得て共に国務に励み、それによって先代の王の恥をすすぎたいのです。先生、ふさわしい人物をお教えください。その方を師として学びたいと思っています」。
郭隗はそれに答えて、「昔、ある君主が大金を出し使用人に駿馬を買いに行かせたそうです。ところがこの使用人は死んだ馬の骨を五百金で買って帰ってきました。君主が怒り出すと彼は『死んだ馬の骨でさえこんな大金を出すなら、それを聞いた人は生きている馬ならもっと高く買うに違いないと思うはずです。駿馬はすぐにも手に入りましょう』と言うのです。やがて一年もたたないうちに三頭の駿馬が手に入りました。今、王がぜひとも賢者を招きたいと思われるならば、まずはこのわたくし、隗からお始めください。さすれば私よりも優れた者が千里の道も遠しとせず、王に仕えるためにやってくるでしょう」と言うのでした。

そこで昭王は郭隗のために彼の屋敷を建て、郭隗を師としてその教えに耳を傾けるようになりました。こうするうちにやがて賢者たちが争って燕にやってくるようになったということです。

 

事例2:日本は学歴社会なのだろうか?

人工知能(ChatGPT)に次のような質問をしてみました。その回答を御覧下さい。

問い:日本は学歴社会だ、という説をよく目にするのですが、「日本は他国に比べて学歴を重視する」ということを示すデータはあるのでしょうか?(2025.07.01)

 

ChatGPT:とても良い問いですね。「日本は学歴社会である」という主張がよくなされますが、それを裏付けるには、他国と比較して日本が学歴をどの程度重視しているのかという点に注目する必要があります。以下に、主なデータや指標、研究を紹介します。

 

✅ 1. 学歴と賃金の関係(OECDデータ)

OECDが公開している「Education at a Glance(図表で見る教育)」では、各国における学歴と所得の関係を比較できます。

  • 日本の特徴:
    • 日本では大卒者の賃金は高卒者に比べて約5~1.6倍程度(OECD平均と同程度、やや低め)。
    • つまり、賃金に関しては、学歴の格差は他国と比べて飛び抜けて大きくはない。
    • 参考: OECD Education at a Glance 2023

📝 補足:
米国など一部の国では、学歴による所得格差が日本より大きい(大卒は高卒の2倍以上になることも)ため、賃金面では日本は「超学歴社会」とは言いにくい。

 

✅ 2. 就職活動と採用における学歴重視

  • 新卒一括採用と学歴フィルター:
    • 日本の企業は新卒採用時に大学名(偏差値)を重視する傾向が強い。
    • 「学歴フィルター」と呼ばれる、大学名による応募制限が存在。
    • 特に大企業では、「どの大学を出たか」が「何を学んだか」より重視されやすい。

🔍 出典例:

➡ この点では、日本は他国よりも学歴を強く重視しているという傾向が見える。

 

✅ 3. 社会的地位・結婚・家庭背景との関連

  • 日本では、結婚や社会的地位にも学歴が大きく関係すると言われています。
  • 東大・京大卒など高学歴者同士の結婚の割合は他国よりも高く、いわゆる「学歴の階層化」や「教育格差の世代間再生産」が見られる。
  • 教育社会学の研究では、日本は「学歴に依存した社会的分化が強い国」の一つとして言及されることが多い。

 

✅ 4. 国民の意識調査

  • 「高学歴の方が成功する」という意識を持つ人の割合は、日本では依然として高い。
  • 国際比較調査(例:国際社会調査プログラム ISSP や WVS)では、日本人は「本人の努力」や「教育レベル」が成功のカギと答える傾向が強い。

 

🧭 結論:日本は「学歴社会」か?

指標

日本の位置づけ

賃金格差

中程度(OECD平均レベル)

採用での学歴重視

強い(他国より明確)

社会的地位との関連

強い

国民意識

学歴重視の傾向が強い

📌 総合的に見ると、「日本は採用・社会的評価において他国よりも学歴を重視する傾向が強い」ことがわかります。

***

 

本章を楽しみ、そして、「善き人間関係の実践」、「賢者と学歴/学校歴と実践」への関心を深めて頂ければと思います。